拝啓、鴨川を愛する皆さま

 

 

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京都の5月の始まりは、床開きから始まる。

 

4月の下旬には、鴨川沿いの店店が、川床の用意を始めるところが見られる。

 

昔ながらの料亭には、男性の板前さんたちがいるからか、床に敷く畳を運ぶ作業もスムーズだ。

一方で、個人経営の小さな旅館の場合、男手が少なくて、女将さんやアルバイトの仲居さんがなかなか大変そうに用意をしていたりする。

 

連休に入る直前の鴨川を歩いていると、そんな場面が見られたりした。

 

夕方になると、明かりがともり、にぎやかになり始める。

名物「鴨川等間隔カップル」が、少しいい雰囲気になる時間。

 

四条大橋三条大橋付近の河原では、酔い覚ましに風に吹かれている人や

学生サークルが輪になって何やら叫んでいたり。

川床の一番川に近い席のお客さんは、道行人とたまに目が合ってしまったりする。

 

木屋町通りを歩くと、時折、舞妓さんや芸妓さんがお店に入っていく姿が見える。

 

鴨川のすぐ隣を流れる高瀬川は、静かに夜の街の明かりを映す。

 

7月の祇園祭に向かって、ゆるりと風が吹く。風にのって笛太鼓の音が届く…

 

 

 

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この景色を、風を、音を、

京の街は繰り返してきた。

 

 

今年の床開きは、静かだった。

 

今年も、同じように見えるものと思っていた。

 

川床ありて京のせせらぎ変わらざる -百合山羽公

 

今の鴨川に、今までのような川床の姿はない。

けれど、鴨川は、変わらず流れている。季節も、変わらず流れている。

 

 

 

拝啓 鴨川を愛する皆さま

 

生きて、また川床で飲みましょう

 

             敬具