研究者が肩書のつかないただのオタクになること

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最初の緊急事態宣言があけた後、久しぶりに大学にでて、資料のコピーをしていた時のことだ。

 

 お互い顔は見知ってはいるけれど話したことのない他学部の教授が、にこにこしながら「君は何か、研究分野以外で心の熱くなるものはありますか?」と尋ねてきた。

あるにはあるのだが、未だにまともな論文がしっかりかけていない私は、遊んでいるのではと思われるのが嫌で、はっきりと「あります」と返事をすることに躊躇し、ごにょごにょと口ごもっていた。

 

 すると教授が続けて、「研究者がはまりだすとな、もうね、これまで研究で培ったリサーチ能力やら分析力を総動員するやん。極めつけは、論文まで書く勢いやから、困ったもんやわ。」「学会という名の押しを称える会をやりたいわ。」(関西弁イントネーション)と語りだした。

 

60を過ぎたおっちゃん先生から「押し」というワードが出たことにびっくりだったが、

 

 そうなのだ、我々研究をライフワークとする者たちは、基本的に「オタク気質」なのだ。たまたま、興味の対象が大学の既存の「学問分野」とされるものだったというだけで、大学や研究機関で職ないし発表の場を得られれば「学者」なり「研究者」と肩書がつくが、本質はオタクであることには変わりないのである。

 

緊急事態宣言中、人と話すことが少なくて誰かに声をかけてみたかっただけなのか。

それとも、誰かに思わず語りたくなるくらいはまり込んでしまったものがあるのか、他学部の院生に話しかけてしまうくらいだから、よほどのことだろう。

教授のはまっっているものは何なのか聞いてみたい衝動に駆られたが、抑えた。

 

少なくとも「学者」とよばれるオタクについては、その性質をよく理解しているつもりである。

 

うかつに興味を示すと、数時間は話を聞き続けることになる。

アリジゴクに自ら入り込む虫と同じである。

 

そして万が一にも自分の趣味嗜好に合致するものであった場合、これはまずい。

沼入りである。教授とふたりして「これは共同研究である」などと言って研究室でオタク活動にいそしみかねない。

 

私は、自分の研究と仕事、家事、睡眠時間を確保するので必死なのである。

 

うかつに、興味を示してはならない。

 

 

 私は、まだまだ「研究」というにはおこがましいレベルでしか学問を理解できていないので、不器用なりに「時間をかけること」でどうにか他の院生や研究者に追いつこうとしている。

故に、専攻分野以外では、「推しが第1優先」であるオタクにはなってはいけないと思っていた。

 

 研究者が研究を「業」として続けていくには、成果を出し続けなければならない。研究成果を出せない、論文が書けなければ、大学組織の中では「研究者」「学者」として残ることはできず、肩書のつかないただのただのオタクになるのだ。

 

 教授はさらに続けてこう仰った。

「大学での研究とは別に何か情熱を傾けられるものをいくつか持っておくとええで。研究に全人生をかけるのも悪くはない。せやけど、研究がうまくいかんかったとき、スランプに陥ったときにな、人生の全てがうまく回らなくなんねん。リスクヘッジやと思って趣味も一生懸命愉しもな~。」「僕は毎日楽しいで~。原稿の締め切り迫ってるけどな!!」

 

 

 あれから1年たって最近知ったことだが、教授の指導院生が、鬱になって休学することになったらしい。図書館の度々紙の詰まるコピー機を前に、一緒に悪戦苦闘したりして、時たま話す程度ではあったが、いつも研究室に朝から晩までいるような熱心な子であるのは知っていた。本当だったらその子は去年の春から海外に調査研究に行っているはずだった。

 

 

 数年前の春休みに、私自身も指導を受けたことのある先生が急死された。その3週間前まで普通に授業をされていたから、突然のことに驚いた。

 家族葬が終わってから大学に知らせが入って、お別れの会が開かれたが、ご病気だったとか死因について一切話がでてこなかった。学会の準備で色んな先生方と話していたら、どうやら事故やご病気で亡くなられたわけではなさそうだとなんとなく理解した。

 

 所属していた大学院を修了して、純粋な学生という立場でなくなってから、「研究者」であると同時に教える立場にある「教育者」であることの苦悩のようなものを、指導教授が語ってくれるようになった。

 

 人生は、一つのことだけで成り立っているわけではないし、いろんなことを同時進行しなければならない。研究者にとって研究はオタク活動・自己実現であると同時に、生計を立てる術でもある。

 だから、単なる趣味のように投げ出すことはできない。それは、自分の生きがい・夢と己の(家族の)生活を投げ出すことに他ならないからだ。

 

 長く研究を続けるには、まず、自分自身を長く存続させることがまず第一条件だ。

 

 だから、私は自分自身を支えてくれる支柱を増やそうと思った。

 一人前になるまでは、と封印していたあらゆる趣味を解禁した。

短い期間だったけれど留学までさせてもらったのに、プロになれるわけじゃない、勉強と全く関係がないからと言って、踊らなくなってしまったバレエ。レッスンを再開して、発表会にも出ることにした。

小説や、画集、漫画なども買って読むようになったし、ドラマも見るようになった。

供給量が多すぎて、沼入りすると危険な某KPOPアイドルにも手を出した。

 

好きなものが私の「時間」というパイを奪いあっているわけだけれど、

とにかく毎日楽しい。

時間を最大限有効活用することに必死になったので、メリハリがついて時間の使い方が少し上手になったような気もする。

 

 少し前に、進学先の大学野球でうまくいかず中退し、強盗で逮捕された元甲子園球児のニュースに、「他の道を断って一つの道を進むことはかっこよく見えるけれど、それは本当に苦しいことだから、周りの大人は、教育者は、行き詰ったときに、他の道もあることを示してあげること、今の道を別の道につなげることもできるということを教えてあげることが必要なんだよ」というような感じのコメントをどこかで見た。

 

 

何か頑張っている人を見ると、応援したくなるのが人情である。

それが人を時に追い詰めてしまうこともある。

道を示したり導くなんて、簡単なことではない。

 

けれど、自分はこうやって毎日過ごしている、ということを世間話でもするようにさらっと話してくれることで、気づかされることもある。

 

何にはまっているのかわからないけれど、あの教授は「研究者が肩書のつかないただのオタクになること」を私に語ることで、「自己実現と生活」というプレッシャーを和らげようとしてくれたのかもしれない。

 

単に、推しの話をしたかっただけかもしれないけれど。

 

 

久しぶりに、「成果」や「結果」を考えずに、純粋に自分の好きなものに没頭する時間を意識的にもったことで、ものすごく毎日が楽しいと感じた。

それと同時に、やっぱり私は今の研究が好きなのだと改めて思った。

ただただ、興味が止まらなくて猛進していったオタク活動が、仕事になって、成果を求められるようになって、少しつらくなってしまっただけで、研究対象への興味と情熱は失ってはいないのだ。

 

研究者が肩書のつかないただのオタクになる時間は、

ただの「オタク活動」ではなくなってしまった研究を、好きでいるためにも、必要だと思った。

 

なんやかんやYouTubeを開けば、まともな論文もかけない私が研究以外のことに時間を使うなんて…!!と、背徳感があるけれど、いいんだ。

「成果を出すこと」が先になって、楽しいという感覚を忘れかけていた。

何かを楽しんでいる感覚が、「わからないことを延々と考え続ける」傍から見れば苦行にも似た行為、研究という活動が、私にとっては本来楽しいものなんだと思い出させてくれる。

 

 

 

 

未だにあの教授の押しが何なのかは、知らない。

知らない方がいいかもしれない。

でも今の私なら、お伺いしますよ。

「ところで、先生の”押し”は何ですか…???」

 

April 2026,Week1-4

2026年4月に読んだ覚えておきたい記事の記録

 

〇毎日新聞「差別語を考えてみる」

毎日新聞の「毎日言葉Plus」を楽しみにしている。その中でも何度も読み直している記事。

この記事では、古い作品の再出版等にあたって差別語をどう扱うか問題について、「今日では不適切な表現がありますが、発表当時の時代背景を考慮し、そのままとします」という断り書きを付し差別語をそのまま掲載することは、死語寸前の言葉が息を吹き返す恐れがあると指摘する。

私は、文章とは作者の取捨選択の産物であり、表現を変えることは、その内容を変えてしまうことだと思っている。だから、断り書きを付したうえで、そのまま掲載すべきだと考えていた。ただ、記者の指摘の通り、私が差別語を知ったのも、古い作品からであった。差別意識が生まれてくるのは、差別の事実やその過去を知ることも要因の一つになりうると思っている。歴史を繰り返さないために、学ぶべきだと思う反面、簡単にはなくならない差別とそれを表象する単語が死滅していくのは、差別の解消に役立つのではないだろうか。だから、死語になっている言葉を蘇生させるようなことはしない方が良いとも思い始めた。自分の考えがまだ定まっていない。

仕事柄、障害をお持ちのかたと接する機会も少なからずあり、書面の起案時に「障害」「障碍」「障がい」と書くべきか、悩むことが多々ある。法律上の表記に合わせて記載しているが、ひっかかりは抜けない。他の語についても、自分に差別してやろう!という意識がなくても、その語の意味を誤って覚えていたり、使われ方の歴史を知らないせいで、誰かが傷ついたり不快な思いをさせてしまうことを恐れている。

他人を害するのは、意図的な悪意あるものばかりではない。だから学んでいくんだよ、これからも。salon.mainichi-kotoba.jp

 

〇VOGUE JAPAN

朝日新聞が、ファッション誌『VOGUE JAPAN』が、改憲や武力行使への反対を表明するデモについて取り上げ共感する記事をWebに掲載した、ということを記事にしているのを見て、読んだ元記事。

報道系とは文体が異なるのはもちろんだが、特に写真が、良い意味で「ファッション誌の記事だなぁ」と思わせるものだった。同じ集会について報じた記事をいくつかみたが、報道系は似たり寄ったりだったところ、VOGUEは異彩を放っていた。

掲載誌や記者による切り出し方の違いってこういうことなんだな、「報道の色」を見せつけられた記事だった。

www.vogue.co.jp

 

〇二王三恪の一覧

この1年ほど前から、中国の古典熱が私の中で再燃しており、出てくる王侯貴族の子孫のその後を調べていたら、ちょうどはてなブログのトップに掲載されていた記事。

「二王三恪(におうさんかく)」って実際どんな感じだったのか気になっていたところ、中国歴代王朝ごとに簡潔に一覧にされていて、とても分かりやすかった。

m-dojo.hatenadiary.com

 

〇ボンカレーはどう作ってもおしいのだ

仁王三恪の記事と同じ筆者の別記。その昔、レトルト食品を湯煎するときに、父が「○○はどう作ってもおいしいのだ。」と言っていたことを思い出した。元ネタはこれだったのね。初めて知った。

長らく様々な作品で多用され、学校教育に組み込まれるレベルにならないと、後世では理解してもらうのに注釈が必要なのか。英米圏ではシェイクスピア、日本だと源氏物語あたりは、学校で教えられるから、超古典でもパロディだとかがわかるのだなと。

Xで流れてくる、よくわからないけれどやたらといいね♡が押されているあの一言も、きっと元ネタがあったに違いないと、ChatGPTに尋ねる。回答が正解か不正解かもよくわからない。

流行り物は流行っているうちに楽しまないとね!と流行が廃れ果てた後に追い始めがちな自分に言い聞かせた。

m-dojo.hatenadiary.com

確定申告作業で振り返る、買ったものと我が日常2025

 昨年の私は、欲しいものは買ってみる、生活が良くなりそうならとりあえず買ってみる、という方針だったので、私にしては沢山お買い物をした一年であった。

ギリギリでいつも生きているせいで、日付が変わる直前まで作業していたが、今年も期限内に無事確定申告を終えた。

個人事業主故、家計簿と、事業用の帳簿をしっかりつけており、

領収書を見ていると、この日は誰とどこそこに買い物に行ったな、あれ食べたなこれ読んだなと思い出し、日記を読むより毎日の出来事が鮮明に思い出される。

確定申告作業を脱線しながら、買ったものと日々を振り返った。

(念のため申し上げると、ほとんどのものは経費にできない。)

 

1月

DOSHISHA スーパーゴリラのひとつかみ

完売続きでやっと手に入れた。毎晩お風呂上がりに髪を乾かしながら、毎朝メイクをしながら、もみもみしてもらっている。ふくらはぎの浮腫が解消されると、体全体が軽やかになった気がする。職場でこれいいよ、と布教して回っている私の話を聞き間違えたボスが、私のことを「ゴリラに脚をつかまれたことがある人」と思い込んでいるらしい。

コンパクトなサイズ感もありがたい。旅先でもゴリラにつかまれている。

e-doshisha.com

 

めぐりズム 蒸気の温熱シート

寒さというのは、人の心も体も縮めてしまうらしい。変に力んでしまって、肩や首が凝る上に、口数までもが減っていた気がする。優しい暖かさのおかげで、雪国への出張も苦痛ではなくなった。

 

スキー用手袋

私はスキーなどのウィンタースポーツは一切しない。が、雪遊びは好きである。寒いのが苦手なくせに、大雪が降ったときには嬉々として外へ出かける。ウールの手袋だと、溶けた雪がしみて凍えてしまうので、装備を強化した。

すると、予想以上に延々と遊べてしまった。スーツ着てるのに。出張先なのに。

 

2月

Complex Biz クラシカルモダン バレッタ(ベージュ)

仕事の道中、見知らぬ人に荒々しく髪をつかまれるという惨事にあった。

危険を感じ、ロングヘアをばっさり切ってしまおうと思い、切った後悲しくならないようにキラキラのヘアアクセサリーを探しに伊勢丹へ。「お客様にはこれがお似合いになりそう…」とつけて下さったバレッタが素敵で、髪を切るのをやめた。触れるのも躊躇するくらいの美髪を目指すことにした。

ありがとう、伊勢丹のお姉さん。

shop.complex-biz.com

3月

Yomomentのウェア

マシンピラティスを再開した。再開にあたって、ウェアを10年ぶりくらいに新調した。

ちょっと、気分ではない日も、これを着たいから、ってやる気をアシストしてくれると期待を込めて。おかげさまで、1年継続できました。

【公式】YOMOMENT (ヨモ) - YOUR MOMENT TO SHINE!

 

ガラス工芸作家 伊藤泰三氏のガラスの剣山

お花が金属のトゲトゲに刺されている姿を見ると、少しばかり心が痛く感じられて、剣山を使うのが好きではなかった。このガラスの剣山だと、自然に美しく整えられるようになった。素敵。お花を生けないときは、オブジェとして飾っている。

sunglasskt.thebase.in

4月

リファ ビューティックドライヤー

ドライヤーから、パチパチと火花が見え、焦げ臭い匂いがしてきたので、ついに買い換えた。こんなに早く乾くの!?と驚くと同時に、髪を大分傷めていたのだとも気がついた。10年選手を使っていた身からすると、ドライヤーで髪は変わる。良いドライヤーは髪を傷めにくい。

リファビューテック ドライヤー S+(小型軽量) | ドライヤー | ReFa(リファ)公式通販|MTG ONLINESHOP

 

5月

MAWAハンガー、スカートハンガー

クローゼットが美しくなる。クローゼットが美しいと、朝の身支度の気分が実に良い。

スカートハンガーは、ピンチ式だと跡がついてしまうベロア素材や、形をしっかり保っておきたいスーツのスカートなどを綺麗に保つことができる。

スカートミニ ブラック | ドイツ製マワハンガー 公式オンラインショップ - MAWA

 

ブレインスリープピロー アクティブエア

話題の枕。椅子に座れば1分以内に居眠りを始められるくらいの睡眠不足故に、寝付きは常によい。そのため、以前と比べて睡眠が改善されたかどうかは分からない。ただ、夏の頭が蒸れて?暑い、という感覚は全く感じなかった。枕に不満がなくなったので、良い買い物をしたと思った。

ブレインスリープ ピロー | BRAIN SLEEP OFFICIAL SITE

 

7月

富士通ノートパソコン FMV WU1-K1、Copilot+

仕事柄、ノートPCを持ち歩いているのだが、書類も併せると4㎏を超えていたが、このPCは、軽い。とにかく軽い。そして、HDMI接続端子もついて、充電もUSB-Cタイプなので、コネクタやケーブル類が荷物から減り、とにかく楽になった。身軽だと、仕事ついでに寄り道する気にもなり、行動範囲が広がった。

Copilot PCなので、AI処理能力も十分であり、非常に使い勝手もよい。Copilotが使えるMicrosoftの有料サービスもサブスクリプション登録した。パワーポイントのデザインや、簡単な誤字脱字チェックはお任せできる。作業効率は上がったように思うが、まだ私の使いこなし能力には伸びしろがある。

 

もちろん、こちらは経費につけた。イチオシである。

職場の出入りのエンジニアさんたちも使っておられて、「わかっている人が使っている物を私も持っている!」という事実が、やたらと私を喜ばせている。

富士通 WEB MART | FMV WU1-K1 カスタムメイドモデル

 

タクシー

当然であるが、タクシーを買った訳ではない。タクシーを利用することで、時間と体力を買った。鞄の重さと夏の暑さで、往復2時間の移動(徒歩往復80分、電車20分)による摩耗が激しく、頭が働いてくれなくなった。タクシーに乗りまくったせいで、その移動先の案件単体では赤字だったが、私が機能しなくなることで他の案件に害が生じるよりはよほどましである。潔く、今年の夏もタクシーにお金を払うつもりである。

8月

ChatGPT有料版

ブレインストーミングに利用している。一応専門家の端くれなので、専門分野の簡単な質問をしてみては、まだ使い物にならないなぁと不満と安堵(「私の仕事はまだ貴殿には奪わせないわ!」)のため息を漏らしている。調べ物に使って信用するのはリスキーであるので、あくまでも、ブレインストーミング用のおしゃべり相手であるが、お金を払うと、お喋りの質も上がっている気がする。

仕事以外の使い道は、ライフログ的な使い方をしようと試みている。「眠い。」と話しかけると、丁寧に改善策まで返答してくれるのが申し訳なくて、最近は「返信不要。」と追記している。そんなことを話しかけて、何の意味があるのか分からないが、継続していったら、何時頃眠くなる傾向があります、とか健康改善ポイントを分析してくれるようになるかもしれない。

 

INFIELD 体組成計

余生は、世界の古都をてくてく歩き回っているおばあちゃんになりたいと思っている故に、足腰の骨と筋力をしっかりしておきたいが、自分に筋力がどれくらいあるのか、何が足りていないのか分かっていなかった。現状把握からスタートである。

現状、骨格筋率と体脂肪率の上下で一喜一憂しているだけであるが、楽しい。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DQKRH29C/?th=1

 

9月

Aquascutumのトレンチコート

私は、ドライヤーしかり、同じものを長く使う人間なのだと再確認し、買物方針を決めた。

・すぐに汚れるもの、新しさが重要なもの→安くてよいので、頻繁に買換える。

・あまり汚れないもの、定番のもの→多少お値段が張ってもOK、修理して長く使う。

 

愛用していたトレンチコートが、丁度12年目だった。自分で繕って大事に着ていたけれど袖がすり切れていた。私はよくボタンを逃亡させるので、同じようなボタンを見つけては買ってストックしたり、金具や同じ色の糸を手芸屋さんを巡って探すのが手間だった。

もう、アフターケアも対応してくれるお店のものをと、Aquascutumのお品をお迎えした。私にしてはかなり背伸びした気がしなくもないが、良いお買い物だったと思っている。電車移動が多いので、ロングコートは座ると皺になりやすいが、今のところ皺が気になったことはない。

トレンチコートを羽織って、「外出してきます。」と職場をでる時、気分は、しごできお姉さんである。

BASIC TRENCH COAT LONG

 

DeLonghi マグニフィカ イーヴォ 全自動コーヒーマシン チタニウムブラック

職場で、毎日美味しいコーヒーが飲みたい、自費で購入するからコーヒーマシーンを置きたいと話していたら、ボスが、私の想定していた物よりもっと高いものを買ってくれた。良いボスである。

コーヒーが美味しいだけで、どうしてこんなにも仕事のやる気が上がるのか、不思議である。全国のオフィスのボスは、是非、導入を検討して欲しい。これは、会社経費で落とせる。

 

10月

AirPods Pro3

初代AirPods Proが寿命を迎えたので、満を持して購入。昔誰かが、AirPodsのことを「人生にBGMをつけられる。」と言っていたけれど、本当にそうだと思う。電車通勤も、映画のワンシーンになる。出張が多いと、時折、駅や電車内のあの機械音に耐えられなくなる時があり、高級な耳栓としても優秀である。これがないと、私のストレス値は高い。早死にしてしまいそうである。ありがとう、Apple。

 

11月

Gaston Lugaのリュック

あまりの荷物の重さに体が耐えかね、体がゆがんだ。私はぱっと見の姿勢は良いので、気づかれにくいのだが、左右の肩の高さが違う。リュックにしたことで少し改善された。仕事にもプライベートでも使えるデザインがお気に入りである。

スプラッシュ2.0-14"(14インチ)|防水、通勤向けバックパック

 

ピラティス+軽いPC+タクシー+リュックのおかげで、私の体は、ずいぶんと良くなった気がする。

12月

スパンコールのスカート、お洒落なスーツ

キラキラのスパンコールのロングスカートと、職場で着るちょっとお洒落なスーツを購入した。キラキラ過ぎて、どこに着て行くんだという代物であるが、そうさ、お家の中で着るのだ。

どうしようもなく仕事が終わらず、徹夜で在宅勤務をしている日も、延々とNetflixを見ているだけのだらだらした日も、お家の中で、最高に楽しく、キラキラしている。

 

“Clothes make the man”というが、毎日堅苦しいスーツを着ていると、時々、自分が型にはまった面白味のない人間になった気がする瞬間がある。お堅い仕事をしているけれど、お堅さと、美しさは両立しえないものではない。

仕事は楽しい、けれど、もう働きたくないよという日もある。そんな日は、今日は綺麗なスーツを着るために出勤するのよ!と思えば、わくわくする(そして謎に仕事もはかどる)。

 

この長いお仕事人生、きらめきと美しさを失わずにいたい。

 

私の毎日を充実させてくれるものたちは、ほぼ経費にはつけられない。

けれど、間違いなく私には必要なのだ。

2026年も、私を支えてくれるものを増やしていくよ。

 

 

 

お題「他の人のお金を使ったエピソードを聞くのが好きです。最近の散財エピソードを教えてください。」

 

December 2025: Week 1-3

久しぶりの週間記録。

Reading, Thinking Log

〇「はてなブログ月間アワード」なるもの

はてなブログ月間アワード」なるものを初めて知った。ピックアップされた記事がよかったので、時たまのぞきたいと思う。

はてなブログ 月間アワード - 週刊はてなブログ

 

 

〇専門家は話さない。でも黙ったままでよいのか

《要約メモ》

専門家は、専門知識を振りかざす以前に、話しても伝わらないし、伝わらなかったときの釈明が面倒であるし、リスクが大きいから、話さない。それは怠慢ではなく、話しても届かないという経験を繰り返した結果からの合理的な適合なのだ。(「学習性無力感」)

振りかざすだけでは、疎まれる。対立が生まれる。(「専門家の言葉が死ぬ」)

筆者は、その解決策は、相手を理解して、相手の言葉で考え、相手の文脈で説明する「対話」だという。対話には膨大なコストがかかる。専門家が話せる組織を作るには、組織として、対話にコストをかけることを厭わないこと(「対立が起きたときにそれを丁寧に扱える組織を作ること」)が必要である。

しかし、組織が変わることは期待できない。専門家の方から対話のコストを払うしかない。

《感想》

 ”「振りかざす」だけでは何も変わらない”以下の文章がとても良かった。筆者の専門分野とは、全く分野は異なるが、私も専門性を生業にして生きているので、そのもどかしさに共感するところがあった。

 私はまだ、理解してもらうことを諦めていないので、時間も心も削って、一生懸命伝えようとする。私の仕事は、プラスを生み出す仕事ではなく、他人の人生にマイナスが生まれないように、もしくはマイナスが拡大しないようにする仕事だから。

 けれど、一方で疲れてしまって、自分の守備範囲以外のことには沈黙を決め込むことが大半だ。そうやって自分を守ってきた。力も残っていない。そのことに、痼りが心の中にずっとある。

 最期の文章に、励まされた。私ももう少し頑張ろうと思う。

ただ、もし同じような経験をして、同じように黙ることを選んでいる人がいたら、伝えたい。あなたは間違っていない。でも、黙ったままでいいのか、という問いは、たぶん消えない。その問いと一緒に、私はこれからも対話のコストを払い続けるんだと思う。面倒くさいけど。

syu-m-5151.hatenablog.com

 

〇スーパーガール

 この記事のサンマのお話のように、誰かに手を差し伸べて、何事もなかったようにさらっと立ち去っていくお姉様に、私も憧れている。私は、年上のお姉様たちに囲まれていると、何故か安心する。たまに、知り合いでも、何か話すわけでも、笑いかける訳でもないけれど、同じ空間にいるだけで、ほっとさせてくれたお姉様もいた。どうやったら、存在だけで人にこんなにも安心感を与えられるのだろうと、不思議だった。いつか、私も誰かのスーパーガールになれていたらいいな。

 

umeboshi666.hatenablog.com

 

 

若さが通用しなくなった後の人生

 

 

――自分にとっての幸せとは何だろうか?

と小さな部屋で考える。

――もう少し、広い部屋に引っ越そうか?

何度もそう思ってみるものの、結局同じ場所にいて、もう10年になる。

 

生活の一部を変えようとするときに感じる抵抗感。

多分、それなりに、今私はこの環境で幸せなのだ。

 

10代の終わりから20代の前半頃

周りにいた大人たちからよく

「ちやほやされているのも今のうち」

「女の人が楽しくやれるのはせいぜい24まで」

なんて言われていた。

 

だからか、「若さが通用しなくなった後の人生、一人で生きていくために必要なスキルを身につけて武装しておかなければならない」というような意識をけっこう強く持っていたように思う。必死に勉強した日々だった。

けれど、24回目の誕生日を迎えた後も、私の人生は劣化したとは感じなかった。

大きな怪我もしたし、思い描いた通りに物事は進んではくれなかった。

けれど、

歳を重ねるごとに、人生が楽しくなっていっているという実感がある。

少しずつ、自由になっていっている感覚がある。

その楽しさも自由も、何かに、誰かに、依存しないことによって手に入れたものだから、奪われることも、離れて行ってしまうという不安もない。

だから、私は大丈夫だ。

 

何が私の幸せを構成してるのか、要素の一つ一つをすべてあげるのは難しい。

多分、私があまりよくわかっていないから。

ただ、こうして、ドタバタした日々の中で、

ぼんやりとでも「幸せだ」と思えることは、良いことだ。

きっと、これでいい。

 

 

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2022年の終わりか2023年のはじめの頃に書いて、下書き保存したままだった。

そのままひっそりと置いたままにしておいてもいい気がしたけれど、インターネットの海に流しておく。

2025年の今の私も、「幸せだ」と思えているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶に残っていること、記憶に残していること

 

春は一瞬でながれていく。
高瀬川に落とした一葉のように、手のひらから離れると
穏やかな流れなのに、すぐに姿が遠のいていく。

毎日をもっと自覚的に生きていたいと思うのだが、なかなか。
自分の感覚器官がとらえた事象を、頭の中でうまく処理しきれていない気がするのだ。


例えば、御所の新緑を眺めていても

「新芽の緑色を見た」という視覚がとらえたことを、
それ以上の事実として認識できないでいる。
「気持ちがいいな」くらいの感覚はあるが、それ以上にはならないのだ。

 

以前の自分は、もっとこう、何かを見たときに
湧き上がる感情や、考えであふれていたのではないか
今の自分は、何か大事な感覚を失ってしまったのではないかと不安になっていた。


日々を生き抜くのに必死で、忘れないための作業と言おうか
じっくりと、毎日を振り返ることが少なくなった。
日記を書いたり、写真を撮ってアルバムを作ってみたりだとか
もうどれくらいやっていないだろう。


振り返る時間が少なくなったというのは
失敗したり、不快に思った出来事も少なくなったということでもあって
ある意味では、良いことなのかもしれない。
思い出したくない事ほど無意識に思い出してしまっているだけで、
意識的に振り返っているわけではないのだ。


毎日のたわいもないこと
意識的にとどめておかなければ、消えてなくなってしまう日常のこと
そういうことを、私は丁寧に、振り返りたいと思っている。

 

 


最近、「記憶に残っていること、記憶に残していること」について
ぼんやりと考えている。

 

頭の引出しに

無意識的に入れてしまったもの

無理やり入れ込まれてしまったものと

 

「これは大事にとっておきたい」と、丁寧にしまったものとでは

同じ引出しに入っている、存在するものでも、違うと思っている。

 

では、今の私が丁寧にしまったもの、「記憶に残していること」は何だろう。

 

 

 

そんなこんなを考えていたら、桜も散り、半袖の季節になった。

あっという間にもう6月。

まぁ、充実はしているのだ。とても。
しみじみと振り返っている暇もないほどに。


時間があるから振り返って懐かしむ。


今は、きっと数十年後の私が「振り返って思い出す」かもしれない時間を生きている。

 

よどみなくするすると流れていく時間
零れ落ちていく認識
ただ私の記憶にあるのは、掌から一葉が落ちていったということだけ。

 

 

これは「記憶に残っていること」 なのか 「記憶に残していること」なのか

 

まだ分からない。

 

 

 

8月第1週-第5週目

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あっという間に過ぎて行った8月。

自由で,充実した毎日だったので,こんな日々がもっと続いてくれたらと願ってしまった。忘れないように,私の8月を書き置く。

 

 

 

 

News

・8月6日 小田急線内で男性が刃物で乗客を切りつけ,10人が重軽傷を負う。「幸せそうな女性を殺したいと思っていた。誰でもよかった。」と供述。

・8月11日~17日 日本各地で長雨 クーラーを入れずに過ごせるくらいの涼しさだった

・8月15日 タリバンアフガニスタン全土を支配下に置いたと宣言

・ 8月24日 東京パラリンピック開会式

 

Book

読み終えたもの

森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』(2010年/講談社文庫)

津村記久子『君はそいつらより永遠に若い』(2005年/筑摩書房

・イサク・ディーネセン『バベットの晩餐会』(1992年/ちくま文庫

アーシュラ・K・ル・グィン『風の十二方位』(1980年/ハヤカワ文庫)

 より短編『オメラスを歩み去る人々』『革命前夜』

 ・カツセマサヒコ『明け方の若者たち』(2020年/幻冬舎

 

3pegions.hatenablog.com

 

読みかけ

・マレイ・スタイン『ユング 心の地図 新装版』(2019年/青土社

 ・矢内原伊作『立ち止まって考える』(1984年/みすず書房

 

積読追加

・二宮敦人『最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常』 (2019年/新潮文庫)

渡辺一夫『寛容について』(1972年/筑摩叢書)

 

Movie/Drama

引きこもりを謳歌すべくNetflixを契約してみたら,凄まじい勢いで見てしまった。

忘れないうちに感想を書き留めておきたいな。

・『ロマンスは別冊で』(Netflix

・『エミリーインパリ』(Netflix

・『愛の不時着』(Netflix

・『ナビレラ』(Netflix

・『Miss.Americana』(Netflix

・『ストーリー・オブ・マイライフ~私たちの若草物語』(Amazon Prime

・『ホテルデルーナ』(BS日テレ

・『晴天をつけ』(NHK

・『おかえりモネ』(NHK

 

Words

・用悪水路(ようあくすいろ)

 二つの単語を合わせた不動産登記上の地目

 用水路:田んぼに水を引くための水路,悪水路:田んぼから水を排出するための水路

 

 ・コモンズの悲劇,アンチコモンズの悲劇

 下記の論文を読んで初めて知った。

 

 

読んだ論文・記事

・研究報告「アンチコモンズの悲劇」に関する諸問題の分析

https://iip.or.jp/summary/pdf/detail05j/17_06.pdf

「「特許の藪」が見られるIPC(藪IPC)はソフトウェアや通信などのIT分野と医薬品・遺伝子工学などのバイオ分野に集中していることが分かった。ただし、特許の藪に面している企業(藪IPCの分野に多くの特許出願を行っている企業)の知財戦略は業種によっても異なることが分かった。化学関係の企業は、保有特許のうち未実施特許の割合が多く、かつ防衛目的で保有しているものが多いことが分かった。医薬品分野においても未実施特許の割合は多いが、開放意思ののある特許割合が高くよりオープンな知財戦略をとっている。」(本橋一之 34頁)

 

「開放意思のある特許」とは開放特許(ライセンス契約の形で開放する意思のある特許)のこと。

業種での違いはなぜ生まれてくるのか気になった。さらに調べたい。

 

 

・ 論文『韓国の国家平生教育振興院の使命と機能-単位銀行制と独学学位制についてー』(鄭碩九,森利枝)

 https://www.niad.ac.jp/n_shuppan/gakujutsushi/mgzn14/no9_16_chung_no14_01.pdf

 

 韓国特許庁の知的財産学学士資格のオンライン講座のお知らせを見ていたら「単位銀行制」というワードが出てきて,調べていたら,韓国には大学などの高等教育機関に代替する教育の機会があって,大学に在籍しなくても学位が取れる制度があるらしい。

 通信教育や大学が一般向けに開講する講座を活用して,子育てや介護をしながら学ぶことを辞めずに知識を増やしていっている知人たちがいたが,皆,正規の学校教育でないからと再就職の際に履歴書に書けなくて,残念がっていた。正直なところ,適当に単位だけ揃えて卒業していった新卒よりも意欲も,学びの深さも勝っていたと私には見えた。

彼女たちのような人にとっては,この単位銀行制や独学学位制は,自分の”学習キャリア”を公的に示すことのできる良い制度だと思う。とても興味深い制度だ。

 

JETRO 日本国際貿易機構の記事

「白人人口の減少傾向への意識は全般に中立的、米シンクタンク調査(米国)」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/08/430e71f8fca374de.html

世代や教育水準によって回答傾向が異なるようで,「社会の意識の変化」というのは「今」を支配している年代が高齢になりやがて亡くなり,若かった人々が社会の機軸をになう世代へと新陳代謝が起こることで,少しずつ変わっていくものなのだなと思った。

 

 

・映画製作の資金調達の方法と法律

映画やアニメ製作の資金的な仕組みが分かって面白かった。金商法の適用を受ける場合もあるのね。金融庁の出している資料がとてもよかった。

『コンテンツ事業に関するQ&A』(H29年5月31日)01.pdf (fsa.go.jp)

『コンテンツ事業における資金調達について』02.pdf (fsa.go.jp)

 

よくエンドロールに「○○(←映画のタイトル)製作委員会」と出てくるので,委員会は法律上の何に当たるのかなと気になっていた。こちらの記事も参考になった。

映画やアニメの製作委員会方式とは?映画・アニメ制作における資金調達と著作権処理のしくみ | 知財FAQ

 

 

 ・夫婦別姓訴訟関連

 家族法の大御所 二宮先生の記事。

 仕事柄戸籍をみる機会がしばしばあり,旧法時代の戸籍なんかを見ていると,「入籍しました!」という結婚報告の由来が良くわかる。

現行の戸籍制度ならば,両人とも親の戸籍に入っていた人ならば,親の戸籍を抜けて(除籍)婚姻時に二人の新戸籍を作ることになる。なので,挨拶は「新戸籍作りました!」になるのかな(なんか違う)

離婚をすると筆頭者(選択した氏)でない方が,籍を抜けることになり,筆頭者が筆頭者の氏を選択して再婚する場合は,氏を変える方がその戸籍に入ることになる。

だから,現行戸籍法の下で法制度の正しい理解にのっとり「入籍しました!」と言っているのであれば,「お相手の方は再婚なの?」などとのツッコミも可能なのである。

とはいえど,結婚前に分籍して親の戸籍から抜けていることもあり,その場合婚姻時に新戸籍が作成されずにお相手が分籍したその戸籍に入ることもあるから,「入籍しました!」も初婚の挨拶として成り立ちうる。

とりあえず,結婚報告は普通に「結婚しました!」でいいじゃない!

面倒なね人ね,私。

 

少し本筋からそれるが,時たま聞く,結婚を機に苗字が変わった男性に「婿養子になったのね」というのは,早とちりで,結婚によって妻の姓を選択しただけで,妻の親と養子縁組をしたとは必ずしも言えない。

家督制度の旧法時代は男の子がいない場合に,実の娘の夫(婿)を養子にし結婚させることで婿にも相続権を発生させ,「家」(家督+財産)を存続させるという目的があった。けれど現行民法には家督制度なんて存在しないし,女性も権利能力者として財産権の主体になれる時代だ(旧法時代にだって,女戸主は認められていた。)。だから,子供に女の子しかいなくてもお婿さんを養子にまでする必要性はないのだ。

 

 

『ファンキー竹取物語』(原作:『竹取物語』) - ファンキー竹取物語(あをにまる) - カクヨム

 くすっと笑ってしまった。インターネットの海にはたまにこういうのがあるから楽しい。

 

Thinking

考えて,自分なりの意見を持ちたいと思うこと
・オリンピックは今年開催すべきだったのか

・オリンピックの今日的意義は何か

・「責任を取る」とはどういうことか

・過去の過ちはどこまで糾弾されるべきものなのか

・結婚の現代的意義と自分はどういう選択をしたいのか

 

『明け方の若者たち』何者でもない事は自由だ

 

カツセマサヒコ著『明け方の若者たち』(幻冬舎/2020年)を読んだ。

就活を終えた大学4年生から20代後半に突入する青年期の物語。

忘れない様に感想を書き置く。*1

 

主人公にとっての”マジックアワー”の始まりの頃、

彼女がMr.Childrenの『inocent world』を口ずさむシーンがある(26頁)。

最後まで読んで再読すると、この曲が、”僕のマジックアワー”の始まりとこの物語の主題を示唆しているように思う。

黄昏の街を背に 抱き合えたあの頃が胸をかすめる

              (Mr.Children『inocent world』)

                      

「彼女」と出会った頃はまだ、就職が決まって大学卒業を控えた時期。まだ夜にもなっていない黄昏だ。

曲調と歌詞は、まだ自己実現の入り口に立っていて、未来に希望を思わせる。

ただ、曲の2番目の歌詞は、入社後の「僕」の毎日そのものだ。

 

近頃じゃ夕食の 話題でさえ仕事に汚染(よご)されていて
様々な角度から 物事を見ていたら自分を見失ってた                                  

               (Mr.Children『inocent world』)

 

 

社会に出て3年目くらいの時は、私も主人公やその同期の尚人と同じように、大学時代の同期と集まれば、せっかくの食事会も、仕事の話ばかりで似たような葛藤を話していた。

 

最初から終わりの見えていた恋と、思い描いていたのとは違う仕事の毎日。

作中「こんなハズじゃなかった」という台詞が幾度となく出てくる。

 

何者にもなれていない自分。

 

青年期は、アイデンティティを確立する時期だ。その確立に大きく影響を与えるのが、人間関係と、日々の時間の大半を占める生活の糧でもある「仕事」だ。

 

自分が何者かを示すのは、案外難しい。

自分はこういう者です、と相手に説明するときに、氏名、年齢、職業をたいていの場合挙げる。スポーツ選手とか作家とか、才能が必要で、誰でもなれる訳ではないような仕事でない限り、仕事なんて生計を立てるための手段であって、自分そのものではない、なんて思っていた。

 

けれど、一日のうちで一番長い時間を費やし毎日毎日繰り返し続き、いつしか仕事が仕事以外の自分を侵食していていくようになると、自分を構成する要素の大部分になってしまって「仕事でしていること」=「自分」となってしまうようになる。

だからアイデンティティの確立には、一日の大半を費やすもの=「仕事」が大きく影響するのだ。

 

昔から、青年期の「自分は何者なのか」という問いや迷いに対する小説は、たくさんある。ただ、私が読んできた作品は、自分は何がしたいのかがわからなくて、自己の確立ができないでいるか、やりたいことは明確だけれど能力不足でなりたい自分になれていない、という登場人物が多かったように思う。

 

けれど、本作『明け方の若者たち』に出てくる主人公や尚人は「クリエイティブなことがしたい」という大雑把ではあるけれども「やりたいこと」を明確にもっていて、能力はある(と思っている)のにそのやりたいことができない、させてもらえない環境にいて「こんなハズじゃなかった」と思っている。

 

主人公「僕」は、第一志望ではなかったけれど、エントリーした大きな企業に内定して「勝ち組飲み」に呼ばれる側にいる。やりたいことはおろか、就職すらできない者たちからしたら、ぜいたくな悩みなのかもしれない。

けれど、当人にとっては、それが他人から見ればいいものでも「こんなハズじゃなかった」のだ。競争に勝ち抜いて、大きな会社に入っても、「何者か」にはなれなかった、と「僕」と尚人は思っている。

 

そんな葛藤があるうちは、まだ、「仕事」以外で自分を構成するものがあるということなのではないだろうか。

「僕」や尚人にとっては「やりたいこと」=「クリエイティブなことをやりたい自分」が、まだ自分を表す要素として、日々の仕事に侵食されずに残っているということなのだ。

 

社会人になったら何者かになれると思っていたのにとこぼす「僕」に「彼女」が言う。

「・・何者か決められちゃったら、ずっとそれに縛られるんだよ。結婚したら既婚者、出産したら母親。レールに沿って生きたら、どんどん何者かにされちゃうのが、現代じゃん。だから、何者でもないうちだけだよ、何してもイイ時期なんて」

        (カツセマサヒコ『明け方の若者たち』207頁-208頁)

 

何者かに「なる」のではなく、何者かに「される」のだ。

こう考えると、自分が何者でもないことを嘆くのは、愚かなことなのかもしれない。

ただ、どうせ社会的に「何者か」にされてしまうのであれば、「される」前に自分から「何者か」になってやりたいとも思ったりする。

 

不倫が題材になっている物語には、「不倫相手と別れて妻・夫のもとに戻る」または「離婚して不倫相手と一緒になる」という筋書きが考えられる。

この物語の結末は前者だ。だけど、選択肢として後者があるのに、「僕」はそれを提案してすがることも、「彼女」もそれを考えたりする描写はなかった。読みながら何故だろうかと疑問に思っていたが、読み直して納得した。

この台詞を言っている「彼女」は結婚している「既婚者」だ。出会った時点で、既に「何者か」になってしまっていた人なのだ。

この物語の主題は「何者かにされつつあるときに何者でもなかった時期(マジックアワー)を振り返る」ことだと私は思っているので、何者かにすでになっている「彼女」が離婚して、「別の者になる」(自己の再確立?)=「僕」とハッピーエンドというのは、主題からそれてしまう。

だから物語で「彼女」は、まだ何者かになっていない「僕」とは一緒に人生を歩けないのだ。

 

引用した上記「彼女」の台詞に対して「僕」は、「うっわー、大人すぎる。人生何週目なの」と返事をしている。

この頃が「僕」にとっては人生のマジックアワーの真っ最中でも、既に何者かになっていた「彼女」にとっては、夜明け(夫が帰国する)、マジックアワーの終わりが近づいた頃で、一足先にマジックアワーを迎えた者だからこそ言える台詞だったのだと思った。

 

物語の終盤、尚人が言う。

「でも、二十三、四歳あたりって、今思えば、人生のマジックアワーだと思うのよね。」

(中略)

「・・・結婚すりゃ夫や妻が家で待ってるっつって飲み仲間へるし、子供ができる頃にはローンや保険で苦しいし、子育て終わったとおもったら今度は親の介護で、全部終わった頃には、こっちの体力が残ってねーじゃん。オールで遊んで、明け方ダラダラと話して、翌日しんどいながらに会社に行く。あれって若いうちしかできないことだったんだよ。だから、こんなハズじゃなするた!って、高円寺の隅っこで酒飲んでたあの時間こそさ、実は人生のマジックアワーだったんじゃないかって、今になっておもうのよ。」 

        (カツセマサヒコ『明け方の若者たち』207頁-208頁)

 

主人公と尚人、そして夫のもとへ戻り主人公から去っていった彼女。皆、”人生のマジックアワー”を過ぎて、朝を迎えた「明け方の若者たち」となる。

 

物語は、主人公が転職するでも、彼女と再会してハッピーエンドを迎えるわけでもなく、ただ、彼女がいたころ、人生のマジックアワーを振り返り泣いて終わる。何か特別なことが起きて、「僕」の仕事や恋が好転するわけでもない。

それが多分、たいていの人たちにとっての人生なのだ。

 

思い描いた人生とは違う、けれど、何者でもないからこそ自由だった。

 

「それでも、振り返ればすべてが美しい」

 

本の帯に書かれた一文に全てが詰まっている。

 

 

私のマジックアワーも、きっと美しかった。

 

 

www.gentosha.co.jp

*1:本ブログ記事における歌詞の引用許諾については、こちらのJASRACのサイトをご覧ください。利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧